空の見える窓から

50代、主婦。ミニマリストになりたい。

12月14日

13時17分、病院着。面会時間は13時から

 

「お父さーん、来たよー」と声をかけて手を振って見せると、目を開ける。

 

「今日は風が強くて寒いんだよー、でもとってもお天気で明るいよ」

3人部屋の一番入り口に近いベッドで、周囲をぐるっとカーテンで覆われているので、外の天気がわからないし、一定の明るさのせいで時間も分かりにくい。

 

父「今年の冬は寒いのかな」

 

寒い寒いというので、布団をかけなおしたり(布団がカバーの中で丸まっている)、足をマッサージしてみたり。乾燥しがちな皮膚だけど、清拭の時に保湿剤を塗ってもらったのかしっとりしている。それほど冷たくはなさそう。

 

肩先にも手を当ててみるけれど、寝間着越しだと温かさをあまり感じないのか反応なし。いつもするように、「熱は無いよねー」と頭に手を当てると「あったかい手だなあ」。これがいつも一番反応があるんだよね。

 

うとうとと眠る合間に、「点滴と酸素マスクだけで、治療をしてくれないんだよなあ」。うーん、先月の退院の後に、もう緩和ケアに移行しますって説明されてなかったっけ?忘れちゃった?

 

あとは夢の話なのか、「兵庫県警の警察官と、〇〇(母)と、俺でお酒を飲んだんだけど、現役の警察官にはかなわないなあ」「お酒の強い人?」「そう」。

母は白内障の手術をきっかけに、10年ほど前にお酒はぴたりと止めた。父の亡くなった兄は警察官だったけれど、兵庫県じゃないし。「伯父さんの知り合い?」と聞いても「ちがう」。

 

今日の担当の看護師さんが挨拶に見えて、「今日はシーツ交換しますね。お下もキレイにしましょう。またあとで来ます」。

「シーツ交換だって」と言うと、しかめっ面でイヤイヤをする。「寒いから、何もして欲しくない」でもねえ、交換したほうがあったかくなるよ。

 

同室の患者さんが、術後なのか「明日にも歩く練習をしますからね」と言われているのを聞いてニヤニヤしている。父も術後すぐ歩行練習をしたことがあるので、「そうそう、イヤでも歩くんだよなあ、知ってるよ」とでも言いたそうだ。

 

またうとうとしだしたので、眠い?と聞くと、目を閉じたままうなずく。痛いところは無いし、だるいところもないと言う。でも今日は眉間にしわを寄せている。

「そろそろ帰るね。また来るからね」と言うと、目を閉じたままうなずく。一昨日よりさらに口数が減ったような気がする。

 

この翌日、母と弟(次男)夫婦がお見舞いに行った時には、目を開けたり、会話したりはなく、聞こえているのがわかるしぐさ(かすかにうなずいたり、首を少し動かすなど)だけになっていたそうだ。

 

だから、14日の父との時間が、会話らしい会話をした最後だったのかもしれない。